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日本のデジタルトランスフォメーション(DX) PART 1

日本をアナログからデジタルに移行する際の課題とはなんでしょうか?

日本は先進的な社会として知られていますが、デジタルトランスフォーメーションに関しては遅れています。それを変えようとしているのが、EYのパブリック・イノベーション・ラボの責任者である秋吉 亮佑さんです。

今回、私たちは秋吉さんに日本のDXについてお話を伺うことができました。PART 1では、

  • 日本における課題

  • 民間部門と公共部門の違い

  • Covid-19の影響

ミロス・カヴィッチ - Tech Executive Connection ホスト

について説明します。PART 2では、DXを推進する上でパブリック・イノベーション・ラボが果たす役割と、そのプロジェクトの一部、中期的な目標について説明します。

今回のインタビューは、Wahl+Case社のTech Executive Connectionインタビューシリーズの一環で、ホストはエンタープライズテックおよびフィンテックチームのマネージャーであるミロス・カヴィッチです。


インタビュー動画の視聴はこちらから(英語)

PART 1

日本のデジタルトランスフォーメーション (DX)


Q: デジタルトランスフォーメーションという単語の認知度は、ここ数年の間に一気に知れ渡りましたが、実際に何を意味するのかを説明できる人はいないように思えます。あなたはデジタルトランスフォーメーションという言葉をどのように定義しますか?

A: 私にとってのデジタルトランスフォーメーションとは、効率性や生産性を高めるために、既存のビジネスやオペレーションを促進するためのツールや方法論のことです。

DXは価値を付加するためのツールに過ぎず、目的や目標ではないということ、つまり目的のための手段なのです。私がこのように言うのは、日本の多くの企業や公的機関では、DXが目的そのものになっているからです。しかし、目標は常に問題を解決することでなければなりません。お客様の問題、従業員の問題、地方自治体であれば住民の問題です。

そのため、日本では、なぜDXを行う企業があるのか、少し誤解を招くことがあります。まずは何よりも、結果と目的を明確にする必要があるのです。

Q: 自治体の話が出ましたが、民間企業と公共企業のDXには何か違いがありますか?

A: 公共部門と民間部門にはいくつかの共通点があり、同じような課題に直面していると思います。どちらも、DXの目的や関連する技術を理解していなければなりません。

しかし、地方自治体を含む公共部門の場合は、プライバシーポリシーやデータ管理など、多くの制限や規制に対応しなければなりません。地方自治体には、多くのステークホルダーがいます。彼らも、職員やスタッフを抱え、住民の面倒を見なければならず、他の政府機関や中央政府の人々と密接に連携して仕事をしなければなりません。つまり、異なる関係者間での交渉や調整が非常に多く、そのため民間企業のDXよりもずっと時間がかかるのです。民間企業の場合、意思決定の時間とターンアラウンドははるかに早く、一般的に承認ステップも少なくなります。

Q: 日本は世界的に、ロボット工学などの最先端技術を持つハイテク国家として認識されています。しかし、日本のDXは、アメリカ、ヨーロッパ、中国などの他国と比べてどうなのでしょうか?

A: いくつかの国際的な研究で指摘されているように、日本はDXへの取り組みにおいて、中国や他のアジア諸国に比べてはるかに遅れています。このことは、日本とその経済にとって大きな問題となっています。そのため、今年、日本の内閣政府は、政府全体でDXを加速させる責任を負う、デジタル庁の設立を決定しました。

これにより、多くの政府機関が支援を受け、多くの人々が恩恵を受けることになるでしょう。しかし、私は地方自治体については少し疑問を持っています。なぜなら、地方自治体にはDXを推進するための人的・金銭的リソースが必ずしも揃っていないからです。

Q: 自治体については、人材不足やデジタルリテラシーの不足などが指摘されていますね。私もその通りだと思います。日本は「はんこ」の国であり、つい最近まで、すべての公文書に物理的に押印をしなければなりませんでした。それがコロナウイルスの大流行で、ようやく変わってきたのです。その意味では、パンデミックが日本社会のDX化を促進したと言えるのではないでしょうか?

A: 全くその通りだと思います。パンデミックは日本のDXに大きな影響を与えました。ハンコの例はとても良いですが、ペーパーレス化は変革の一側面に過ぎません。パンデミックはまた、私たちの仕事のやり方や職場でのコラボレーションの仕方を大きく変えましたし、これは民間企業にも公的機関にも当てはまります。

日本におけるDXは、コロナウイルスや、新たに設立されたデジタル庁によって一定のレベルまで加速されると期待していますが、それ以上に、すべての経営者がDXがビジネスにどのような価値をもたらすことができるかを考えなければなりません。外部からの働きかけだけでは不十分で、真の変革は内部から生まれなければならないのです。

Q: アナログからデジタルに移行する際に、何か課題はありますか?

 A: 私がよく目にする最大の課題は、人々のマインドセットです。官公庁の職員には、日々の業務や作業に多くの慣習やルールがありますが、国民はその理由を知らないことが多いのです。彼らは単純に、今までの慣習やルールーにしたがってきたのですが、パンデミックをきっかけに、多くの人々がこうした慣習は変えることができるのだと気付きました。

最も顕著な例は、リモートワークに関するものです。パンデミック以前は誰もが、毎日オフィスに行き、人と会ってコミュニケーションを取ることが仕事をする唯一の方法だと考えていました。しかし、多くの人が在宅勤務を余儀なくされると、それが実は有効であることに気付き、人々は仕事のやり方やチームメンバーやスタッフとの関わり方を変え始めました。

Q: 政府について言えば、DXを推進し、これまでの社会を変え始めた取り組みをいくつか挙げていただけますか?

A: もちろんです。最も顕著なものは、中央政府のスーパーシティ構想だと思います。これは、AIやビッグデータなどの技術を活用して、過疎化や高齢化などの社会問題を解決するための法案で、2020年5月に国会で成立しました。彼らはすでに中央政府から補助金などの支援を受ける5都市を選ぶための提案活動を始めています。

また、多くの地方自治体では、公共サービスや医療、交通などに新しい技術を導入し、市民の生活の質を高めるスマートシティを推進する取り組みが始まっています。

PART 2では、日本のDX推進においてパブリック・イノベーション・ラボが果たす役割について詳しくご紹介します。


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