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17歳で起業。1日限定求人アプリ「Spacework」で、次世代の働き方をつくる(前編)

17歳で起業。1日限定求人アプリ「Spacework」で、次世代の働き方をつくる(前編)1日限定の求人を得られるアプリ「Spacework」2017年9月にアプリを正式リリースし、登録者数は2018年8月時点ですでに1万人を超えています。アプリを運営するSpacelook株式会社の代表 谷口怜央さんは、17歳で起業し、「新しい働き方を世に広める」という使命感のもとに、新たな挑戦を続けています。また、Spacelook自体が新たな組織形態の先駆者でもあります。谷口さんが起業を決めた経緯、「Spacework」によって実現したいと考えている世界観などについてお聞きしました。  

Spacelook株式会社の代表 谷口怜央さんのモチベータープロフィールAttunedのモチベータープロフィールについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

――Spacelookを立ち上げた理由、背景は何ですか?

個人が仕事内容や働き方を、より自由に選べる状態をつくりたいと考えたためです。そう強く感じた原体験は、中学2年生のときにさかのぼります。当時私は、野球部の練習によるケガとメンタルの問題から車椅子生活を余儀なくされました。あるとき、道端で車椅子が転倒してしまったのですが、周囲の人は誰も手を差し伸べてくれなかったのです。幸い足は動くようになりましたが、「見て見ぬふりをされた」という経験は、強烈なインパクトを残しました。よくよく考えて、こう気づいたんです。見て見ぬふりが起きるのは、日本人が不親切なのではなく、他者を助けられる心の余裕がないのではないか。そして、その原因はもとをたどると、「他人から強制された働き方」にあると。本来なら、仕事内容や働き方はもっと自由で、柔軟であっていい。そんな新しい常識をつくりたいと思い始めたんです。個々人が心から「やりたい」と思う仕事を選べるようになれば、困っている人がいたら一声かけられる世の中になり、貧困のような社会課題も解消につながっていくと考えています。 

――働き方のアップデートが、「見て見ぬふり」という根源的な問題への解決策にもなると考えられたのですね。「Spacework」の特徴を教えてください。

「Spacework」は、飲食店やホテルを中心に、1日限定のアルバイトを探せるスマホ向けアプリです。個人ユーザーの大部分は大学生やフリーター。特徴はBtoCのマッチングにあり、ユーザーと登録企業の両者にとってメリットがあります。まずユーザーは長期アルバイトでシフト調整に悩むことなく、やりたい仕事に、好きなときに1日単位で応募できる。履歴書作成や面接も不要。しかも、スマホから効率的に仕事を得られます。一方、登録企業側にも、人手不足解消につながるというメリットがあります。1日単位でシフトを埋められるため、急な出来事に対応できるのです。 

――飲食店のホールなどの求人が多いですが、今後職種を広げていく予定ですか?

現在は、アルバイト先はブルーカラー系のサービス業に特化しています。ホールや梱包など、資格やスキルがなくても誰でもできる仕事ばかり。これはまだ第一段階です。次なる展開は、美容師やネイリスト、タクシーの運転手など、有資格者の仕事にまで業種・職種の幅を広げていくこと。今後ユーザーの信用度の証明と、より精度の高いマッチングを可能にするために、ユーザーと企業の相互レビュー機能を導入する予定です。ユーザーは色々な求人を試せるので、どんな業務内容やカルチャーが向いているか、店舗側はどんな人材を求めているか、といった個々のデータを蓄積していきます。たとえば、ホールは向いているけど梱包は苦手というように。まずはユーザーと企業間におけるデータのトランザクションの量を増やして、信頼性、妥当性の高いデータを蓄積していく。いずれは個々のユーザーにあった仕事をレコメンドできるようにして、より良いマッチングをコーディネートしていきたいですね。今後はさまざまな会社で人材をシェアし合う時代が本格化します。長期雇用前提の採用によって人材を囲い込むことは難しくなるためです。これは人材の流動性を高めるだけでなく、人事業務も抜本的に変革することになると見ています。 

――人事業務の変革というのは?

現在、人事担当者は人の採用にリソースを割いています。ですが、「Spacework」のようなサービスが普及すれば、採用の主眼は求人要項の掲載になる。よって、採用が省力化された分だけ、人事担当者は、採用した人材に力を発揮してもらう仕組みづくりに注力しやすくなります。それに伴って、会社の形態も、より多様になっていくはず。私たちのサービス自体が「働き方を変える」ためのものなので、それをSpacelook自体でも実践しています。 

――具体的にどんな組織形態をとっているのでしょうか?

Spacelookは現在、次の3つのチームから成り立っています。アプリや管理画面などの開発チームに7名、セールスなどを担うビジネスデベロップメントチームに7名、そしてデザインのチームが2名。この中でビジネスデベロップメントの5名は正社員で、他のメンバーは副業として土日や夜にSpacelookの仕事にコミットしてもらっています。実は開発とデザインチームはSpacelookとは別会社。仕事を一方的に発注するという、いわゆる「受託」ではなく、一緒に長期的に事業をつくっていく対等なパートナーという関係性として捉えています。スタンスは、マネジメントもない指揮系統もなく、信頼してすべてメンバーに任せていくというもの。だから、それぞれが自律していて、横断的なコミュニケーションが自然と生まれやすくなっています。当然、国籍も年齢も関係ありません。私が現在18歳で、年齢としては一番若い。また、開発チームは全員中国人です。 (後編につづく