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累計91億円調達。「テーマ型」オンライン証券プラットフォームで資産運用の常識を変える!(前編)

FOLIO代表取締役CEO甲斐真一郎さん

注目のFinTechスタートアップ代表取締役CEOに聞く(前編)「貯蓄から資産形成へ」と、資産運用の重要性が叫ばれて久しい昨今。とはいえ、「投資は難しくて手を出しづらい」と感じている人も多いのではないでしょうか。そんな状況を変えるのが、誰もが資産運用を簡単に始め、楽しく続けられるオンライン証券プラットフォームのFOLIO(https://folio-sec.com/)。2017年11月よりβ版が一般公開されています。 株式会社FOLIOは国内株を取り扱う独立系証券会社においては、約10年ぶりに誕生したオンライン証券として、多方面から注目されています。2018年1月には、LINE株式会社、ゴールドマン・サックス、電通ベンチャーズ、三井物産株式会社、SMBCベンチャーキャピタル、DCM Ventures、Draper Nexus Venturesを引受先(※)とした第三者割当増資により、シリーズA2ラウンドで総額約70億円の資金調達が完了しました。シードラウンド以来、創業2年での累計調達額は約91億円にのぼります。 「お金」の価値は徐々に相対化され、価値自体が多様化する現在。「資産運用をバリアフリーに」というミッションを掲げ、全ての価値をなめらかにつなげられるような次世代の金融プラットフォーム構築と、その普及に挑戦するFOLIO。これほど注目されている理由は何なのか。そしてFOLIOの描く構想とは? 約10年のトレーダーとしての経験を活かし、2015年12月に株式会社FOLIOを創業した、代表取締役CEOの甲斐真一郎さんにお聞きしました。

ーー創業からたった2年で、累計91億円という大きな資金調達を完了できた理由は何だとお考えですか。

優秀なチームと、プロダクトの価値が投資家の方々に評価されたからだと考えています。他のスタートアップのCTOレベルの優秀なエンジニアが集まっており、ビジネスサイドもマッキンゼーのパートナークラスの人材がかためてくれている。また、プロダクトについては、CDO(Chief Design Officer)の広野萌を中心に、最適なユーザーエクスペリエンス(UX)の追求を徹底しています。「資産運用をバリアフリー」に、というミッションを実現するうえで、投資初心者にもわかりやすく洗練されたUIは譲れない条件ですから。コミュニケーションアプリLINEとの業務提携においても、両者の事業のシナジーが見込めることはもちん、LINEの「徹底したユーザー目線のデザインのこだわり」に非常に共鳴し、意気投合したという経緯があります。時価総額を評価する際の指標としては、チームやプロダクトと同じくらい、そのスタートアップが狙う「マーケットサイズ」も重要なんです。現在の日本では非金融分野が金融分野に参入するというのが潮流になっている。これは日本の金融分野が他国にないほど大きなポテンシャルをもったマーケットだと、参入する企業も投資家も認識しているから。2017年9月時点で、日本の家計金融資産は、過去最高の1832兆円といわれており、その内訳は、約1000兆円弱が現預金、残り約800兆円が株式などで占めています。今後は、平均寿命がさらにのび、年金の財源問題が深刻化する中で、政府も「貯蓄から投資」の流れをいっそう後押ししていくでしょう。「お金に働いてもらう」ことが欠かせない時代においては、投資未経験の人にとって「使いやすく、信頼の置ける次世代型証券プラットフォーム」の存在が重要になるのは明らかだと見ています。 

――FOLIOは、現金だけではない "価値を交換する時代のための新プラットフォーム"をつくっておられます。こうした構想を描き始めた背景は何でしたか。

FOLIOの構想を練り始めていたのは2014年、創業の1年前のこと。当時アメリカでは、FinTechの勢いがすでに強まっていました。象徴的だったのは、Peer to Peerで借り手と投資家をつなぐオンラインマーケットプレイスを運営するLending Clubに、時価総額1兆円がついていたこと。また、アルゴリズムをもとに資産運用の助言を行うロボアドバイザーの活用も、アメリカでは日常の光景となっていました。一方、当時の日本はマネーフォワードなどの自動家計簿・資産管理サービスがリリースされてまもないFinTech黎明期。アメリカでこれだけ栄えているなら、市場のポテンシャルがより高い日本では、さらに大きなイノベーションの波がくるという確信がありました。ならば、FOLIOがファーストムーバーにならない手はないと考えたのです。 

――FOLIOでは「興味があるテーマ」「応援したいテーマ」を選んで、テーマごとに10万円から分散投資を始められます。このスタイルは非常にユニークだと感じました。

ユーザーは「次世代素材」「VR(仮想現実)」「e-Sports」「温泉」「京都」「コスプレ」といった、テーマごとにカテゴライズされたラインアップから好きなものを選び、ショッピングのように楽しみながら投資をすることが可能です。それぞれのテーマのポートフォリオは、FOLIOが選定した10社の有望企業で構成されています。個別銘柄の組み入れ比率は、FOLIO独自のアルゴリズムによって決定された最適分散比率を用いて算出されている。そのため、単一銘柄への投資よりも比較的リスクを抑えた形で投資リターンを期待できる。これは他社がまねできない水準だと自負しています。いずれはこの投資テーマも、例えば「球団」や「●●大学」というように、より多彩で、ユーザーが身近に感じられるものを拡充していく予定です。 

――「テーマ型投資」というアイデアは、創業初期にすでにかたまっていたのでしょうか。

創業前にはすでにプロダクトのモックアップをつくっていました。これが創業前後の投資家とのコミュニケーションに大いに役立った。モックアップはつくるべき。金融業界のサービスに関するプレゼンは難しい専門用語が飛び交いがち。投資家たちは、スタートアップとの最初のミーティングにおいて、「成長しそうか」という直感を大事にする。だから一目で目を引き、価値がわかりやすく提示できるモックアップが大事な役割を果たすと考えています。 (後編につづく