インスタグラマーとブランドが自由に繋がるプラットフォームを(前編)

株式会社Lxgic(ロジック)代表取締役社長 比留間 研太(ひるま けんた)2015年6月に株式会社Lxgic(ロジック)を起業した比留間さん。商品やサービスのプロモーションを行いたい企業(ブランド)と、影響力のあるインスタグラマーをマッチングする、expausというサービスをローンチしています。インスタグラムをPRツールとして活用する企業は増えているものの、インスタグラマーと企業をつなぐプラットフォームは日本初といえます。比留間さんが弱冠23歳にして、どのようにインスタグラムのインフルエンサー・ビジネスを構築し、どんなビジョンを描いているのかについてお話を伺いました。

インスタグラマーに着目し、expausのサービスを始めようと考えた理由は何でしたか。

比留間 研太さん(以下、比留間):僕は大学1年生の頃から起業経験があり、「自分が好きだと思うことだけに集中したい」と思っていました。学生時代、就職した先輩や就職活動をした同級生から、「会社がつまらない」「この会社に決めたのは条件面がよかったから」などという話を聞いていると、「本当に好きなことをやってお金を稼げる人が増えていくような社会をつくりたい。そのほうがみんな幸せになるんじゃないか」と感じたのです。では、「好きを仕事に」という考えを実現しやすい人は誰なのかを具体化したときに、インスタグラマーが思い浮かびました。素人でも、趣味の写真を追求して素晴らしい写真を撮り、そこにPR効果や価値を感じた企業からお金が入ってくる。そんな構想が生まれました。実際、expausに登録しているインスタグラマーの撮影風景を見学したとき、ご自宅にプロ顔負けのカメラや照明機材が揃っていたんです。「趣味の延長でつきつめていっただけ」と、本人は楽しそうにおっしゃって。これこそが、まさに理想の形だと思いましたね。また、アメリカでは、すでにPRに寄与して稼いでいるインスタグラマーがたくさんおり、日本でもインフルエンサーと呼ばれる影響力の高いインスタグラマーが増えていることを知って、すでに先例があるのなら、成功事例を増やせば、このビジネスは伸びると確信したのです。

素晴らしい考えですね。その戦略性をどのように養ってきたのですか。

比留間:心がけているのは、他の人がまだ手をつけていない「空いている市場」を探すようにすることです。例えば、インスタグラマーを利用した宣伝・PRを行っている広告代理店はすでに複数社、日本に存在します。ですが、彼らは芸能人事務所のような運営方式で、インスタグラマーと企業が出会うプラットフォームは持っていません。また媒介手数料が高く、インスタグラマーへの収益が少ないという課題を感じたのです。そこで、expausのようなプラットフォームで、企業が最適なインスタグラマーを検索してマッチングできる、というポジションを狙おうと思いました。インスタグラマーも価格交渉ができるので納得感を持ってもらえるし、課金もリーズナブルな月額制なので中小企業でも導入しやすい。こういう形態なら、双方にメリットを感じてもらえると考えたのです。また、ビジネスを始める前に意識したのは、事前に市場調査を徹底すること。海外の先駆事例をネットで調べて、「面白そう」と感じたら、その起業家にすぐ電話をし、どういう点を考慮すべきか話を聞くんです。アメリカでは数年前からインフルエンサー・ビジネスが始まっているので、こうした事例から学べたのはよかったですね。おかげさまで、現在インスタグラマーの登録者数が約1800名(2016年6月時点)となっています。

起業からたった1年で、1800名も登録されているってすごいですね! これだけのインスタグラマーが集まっている秘訣は何ですか。

比留間:信頼関係の賜物だと思います。僕たちはブランドとのコラボにおいて、企業よりもインスタグラマーのスケジュールや撮りたい写真、載せたいコメントなどを重視しています。企業側の要望に対し、インスタグラマーが「よりPRに効果的」と感じた意見を反映できるようにサポートするんです。こうして、インスタグラマーの満足度を高め、一人一人との信頼を築いていくことで、その人のネットワークにも口コミで評判が広がり、登録者が増えていく、という好循環ができています。

expaus立ち上げにおいて、ベンチャーキャピタリストからの資金提供を受けなかった理由は何でしょうか。

比留間:資金提供を受けなくても、自分たちのリソースで事業を回せる目途がついたからというのに尽きます。サービス開始の初期段階から、PRやブランディングの担当者に試験的にexpausを使ってもらったところ、良い評価が得られ、すぐにクライアントになってくれたのです。また私たちのサービスはすぐにスケールさせる必要がありません。インスタグラマーとの信頼関係を徐々に築きながら、サービスの拡充をすればいいと思っているので、最初から潤沢な資金がなくてもよかったというのも、資金提供を受けなかった理由の一つですね。

後編につづく