「遊ぶように働く、21世紀の働き方」を追求するプロデューサー(後編)

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スマホアプリのプロデューサーとして活躍されているPlayful Workerを名乗るイセオサムさん。日本テレビ放送網にてズームインスーパーの制作に携わった後、オプトでモバイルのメディアプランニングに従事。2008年にHALOを共同創業。現在はオモロキ、狩猟社、ローディー3社の取締役、PLAY株式会社 CEOと実に多彩な顔をお持ちです。プロデュースされているサービスは、3秒で笑える、日本最大級の大喜利アプリ「写真で一言ボケて(bokete)」や、シェアしたくなるニュースViRATES(バイレーツ)など、起業されてから9年で10種類以上にも及ぶといいます。アイデアを現実に変える卓越した力とアントレプレナーシップに満ちたイセさん。どのように時代を読み、発想力を広げてこられたのでしょうか?そしてPlayful Workerという特殊な肩書に込められた思いについてもお聞きしました。

(前編はこちら

イセさんは人間の本質を常に考えておられますが、ユーザーの気持ちをどのように探っておられるのでしょうか。

話題になっている映画や音楽、ドラマ、アプリなどに一通りふれておくことも、発想を広げてユーザー目線を養うのに役立っています。例えば今だったら話題になっているダイエット家庭教師FiNC(フィンク)を使ってみるとか。あえて普段自分がふれないものにもチャレンジするようにしています。ちょうどバイクパーツのフリマアプリ「Rider's Garage(ライダーズガレージ」に携わっているということもあって、先日バイクの免許をとったんです。バイクに乗っている人口は日本で約1000万人規模なので、自分もバイクに乗るようにすれば、自然とライダーのつながりができますし、ライダーが抱えている課題などにも、よりいっそう理解を深められるんじゃないか。そんな期待も込めています。

イセさんは、mediumなどのご自身のメディアでも発信をされていますよね。発信を続けることで新たな発見ってありますか。

最近はやっぱり自分が日々考えていることを発信していったほうがいいと認識して、発信を再開したところなんですが、読者からフィードバックが得られるというのは何よりのメリットですね。「いいね!」の数や、「いいね!」をしてくれた人の属性などを定点観測していけば、「こういうネタはこういった層にウケるのかな」と、世の中の感覚をつかむことができる。「いいね!」が多くつくということは、フィードを見た人にとって「面白い」という感覚や共感が生まれている証ですから。僕にとってSNSは社会と接続するための大事なツールです。

SNSのとらえ方が変わりました!

自分たちがやっているサービスも、インスタグラムやTwitter、Facebookの反応を見て、「これならいけるか」というのを探っています。自分の感覚と、世の中の受け止め方の差分を測っていくイメージです。昔のテレビプロデューサーって飲み歩いている人が多いイメージですが、おそらく飲み屋の様子やそこで交わされる会話を通じて、時代の流れを読んでいたんじゃないかと思うんです。デスクにすわっているだけでは湧いてこないインスピレーションが舞い込んでくるのだろうなと。

SNSの反応を見ること、飲み屋など街で人の会話にふれることが、時代の流れを読むうえで大事なのですね。

イセさんが名乗っているPlayful Workerという肩書にはどのような想いを込めているのでしょうか。Playful Workerと名乗り始めたのは6年以上前にさかのぼります。今では長時間労働是正や働き方改革の動きが本格化していますが、当時はまだ自分の周囲では「バリバリ働くのが一番いい」という風潮があり、違和感を覚えていたんです。実は、働き方を楽しいものにしたい、という問題意識が芽生えたのは、中学時代くらいからなんです。電車で通学していると、車内に居合わせた大人たちの顔のほとんどが暗いのが気になっていて。人生の多くを仕事の時間が占めているのに、仕事を楽しめていないのはもったいない。楽しく働くにはどうしたらいいんだろう、と。今も、多様な働き方があって、それぞれ楽しめている状態を実現したいと思っているんです。

イセさんはまさにそれを体現されていますよね。面白い仲間と協働していくうえで大事にされている指針はありますか。

「楽しい人と一緒に楽しいことをする」を追求するなら、自社で雇用して100%コミットしてもらうより、対等にパートナーシップを結ぶ関係のほうがいいなと思っています。オモロキの代表である鎌田武俊も私も、どういう組織ならメンバーが楽しく力を発揮できるかということを大事にしているんです。上下関係を決めてマネジメントするのではなく、それぞれの役割が明確になり、それぞれをプロとして尊重しあえる状態がいいね、と話しています。日本では、ヒエラルキーに沿って、トップが統率していく組織が数多くありますが、各自が自立して動けるパートナーシップ型の組織がこの数年で増えていくんじゃないでしょうか。僕たちもパートナーシップ型の実験をしていきたいと思っています。今後は時代の変化がますます早くなっていくし、シンギュラリティが到来するタイミングも予想より早まる可能性だってある。だから事業の計画を長期スパンでかためるよりは、大まかな方向を見据えて、普遍的な「人間らしさ」やAI・ロボットと人間の共存の方法を考えていきたいですね。