「ガイドブックを超える体験」をめざすBebot開発の醍醐味とは?(前編)

「ガイドブックを超える体験」をコンセプトに、人工知能(AI)を搭載したチャットのコンシェルジュ「Bebot(ビーボット)」。このサービスを国内外で展開するのが株式会社ビースポーク(Bespoke)です。日本では1日あたり約35,000人以上が「Bebot」のユーザーとなっています。訪日外国人が増える現在、「AI」×「コンシェルジュ」の領域で国内外から高い評価を得ています。

今回インタビューの機会をいただいたのは、ソフトウェアエンジニアリングチームのヴァイスプレジデントを務めるクリス・ゲルファイダ(Christine Gerpheide)さん、シニアプロダクトマネジャーを務める河野麻子さんのお二人。ビースポークで働く醍醐味は何なのでしょうか? 前編では「Bebot」の特徴や観光・旅行業界へのインパクトについて、後編では仕事の醍醐味、「Bebot」の普及や発展によりどのような世界観の実現をめざしているのかについてお聞きしました。

(右)ソフトウェアエンジニアリングチームのヴァイスプレジデントのクリス・ゲルファイダさん (左)シニアプロダクトマネジャーの河野麻子さん

(右)ソフトウェアエンジニアリングチームのヴァイスプレジデントのクリス・ゲルファイダさん
(左)シニアプロダクトマネジャーの河野麻子さん

――お二人がビースポークで働こうと思ったきっかけを教えていただけますか。

クリス・ゲルファイダさん(以下、クリスさん):私はこれまでAmazonでソフトウェア開発のマネジメントを行い、貴重な経験を積んできました。ですが、組織が大きいこともあり、開発に携われる領域はプロダクトの一部の機能追加・改善など、どうしても部分的な関わりになることが多かったのです。そんなとき、アレクサなどのスマートスピーカーが登場し、AIを使った双方向の会話によるインタラクションの領域で可能性が広がっていると考えるようになりました。この革新的な領域で、かつWebの開発から機械学習まであらゆる領域の全工程に携われるのが、現在のポジションです。ここでならテクノロジーの最先端の知見を幅広く学べる。そう考えて2018年12月に来日し、ビースポークにジョインしました。
河野麻子さん(以下、河野さん):私の仕事は、「Bebot」へのユーザーのニーズとクライアントを含めたビジネスサイドの意見、そしてテクノロジーで何ができるのかという、3つの重なりをいかに高めていくのかを考えること。そのうえで、プロダクトのどの機能を優先的に開発するのかを決定し、各チームの橋渡しをしていくというものです。私もこれまでアマゾンやギルトといったEコマースサイトのプロダクトマネジメントに携わってきましたが、今後さらなる成長が見込まれるconversational design(会話のデザイン)は非常に魅力的に映り、この領域に関わりたいと思うようになりました。

ユーザーが気軽に、上手に「Bebot」に質問できるように、どう誘導したらいいか、離脱しないようにするにはどうしたらいいか。こうした点を練って改善していくのは、チャレンジングで刺激的な経験です。ビースポークの場合は、スピード感があり、自己の裁量も大きく、どんどん挑戦ができる。これはスタートアップならではの良さだと感じています。

――「Bebot」の特徴・強みを紹介していただけますか。

クリスさん:「Bebot」で大事にしているのは、まるで「地元の友人(local friend)が案内してくれているような安心感」を、スマートフォンのチャットで再現するということ。これを実現するために、飲食店・アクティビティの予約や、館内施設の位置、チェックアウト時間の確認などに24時間対応しています。一般的な問い合わせ対応を自動化し、カスタマイズが必要な回答は、日本とアメリカの専門スタッフがサポートすることで、こうしたことが可能になっています。

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河野さん:単にユーザーの質問に応じるだけでなく、ガイドブックや検索エンジンではなかなか調べられないような、知る人ぞ知る観光スポットや美味しいお店など、地元の耳寄り情報を届ける工夫をこらしています。もし友人が地元に来るならどんな風にもてなすのか。そんな視点でUXを設計しているのが、「Bebot」の特徴です。
また、クライアントごとに自由なカスタマイズが実現できるのも、このサービスの特徴の1つです。たとえばホテルだと、周辺施設の情報提供や道案内、周辺のレストランの予約など、各ホテルに応じた対応ができます。主な導入先としては、ホテルニューオータニ、成田国際空港、JR東京駅など。対応言語は英語と中国語(繁体字・簡体字)です。ユーザーはWiFiに接続されていれば、スマホやパソコンなどのウェブブラウザを通じて、無料で利用できます。

――「Bebot」は観光・ホスピタリティ産業に、どのようなインパクトを与えていくとお考えですか。

クリスさん:訪日観光客は増える一方で、旅行・観光産業では人手不足から日々お客さまの対応に追われています。24時間多言語の対応ができるスタッフがいない、もしくは「よくある質問」の対応に忙しく、お客さまへのこまやかな接客の時間がとりづらい。そんな課題を解決するのが「Bebot」です。AIコンシェルジュでも可能な対応を「Bebot」に任せることで、ホテルや飲食店などの従業員は、もっと現場のお客さまに寄り添った、人ならではの接客やサービスに注力することができます。「Bebot」を通じて、目の前の課題をすぐに解決できるだけでなく、本当に使えるプラスアルファの情報が入手できる。そうすれば、それは観光客のさらなる満足度向上につながります。同時に、クライアント企業の印象を良くするだけでなく、日本全体の外国人観光客の増加や日本のイメージ向上にもつながっていくと考えています。
たとえばホテルですと、滞在に満足しているゲストには「Bebot」経由でクチコミ投稿を依頼します。こうしてポジティブな口コミ投稿を増やすことで、予約率アップに貢献しているのです。逆に「WiFiがほしい」などとお客さまから多く寄せられた声を分析し、それを施設の改善点の提案にもつなげています。

――クライアント企業にとって重要なマーケティングやカスタマーサクセスのツールにもなっているのですね。後編では仕事の醍醐味についてお聞きします。

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松尾美里

日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター

Wahl+Caseのブログ記事作成を行う傍ら、株式会社フライヤーにて経営者、著者へのインタビューを行う。

現在、自身のライフミッションとして「キャリアインタビューサービス」の活動を行う。面白い生き方の実践者に話を聞き、その魅力を発信している。

また、70名の生き方をまとめたブログ「教育×キャリアインタビュー」の著者でもある。