テクノロジーで、旅行をよりお得に、より楽しく。—トラベルテックスタートアップattaが描く「ポストコロナ」の未来図とは?

株式会社atta(旧WithTravel) 代表取締役社長 春山佳久氏

「旅」×「Technology」のスタートアップ株式会社atta。ビッグデータとAIを使った「お得予報型 」旅行検索サービス「atta」を提供しています。attaでは日本国内のさまざまなホテル・旅館・民泊サイトを横断的に検索できるサービスです。現時点の最安値が今後もっと安くなる確率を提示し、実際に安くなったらスマホにお知らせしてくれます。

今回お話を伺うのは、2018年3月に株式会社atta(旧WithTravel)を創業し、代表取締役社長を務める春山佳久さん。ポストコロナを見据えてattaが描く構想とはどのようなものなのでしょうか? attaの組織としての魅力にも迫ります。

 
 
 

トラベルテック業界はコロナの影響でどんな変化が起きたのでしょうか。春山さんがその変化をどう見ているのかお聞きしたいです。

旅行業界全般が新型コロナウイルスの影響を大きく受けたことはよく知られていますが、実際、私が知るトラベルテックのスタートアップの中でも、4割ほどは会社をたたむ、もしくは事業を旅行以外に変えるという決断をくだしています。また、そのほかのスタートアップも受託開発や資金調達によって生き延びる道をめざしているというのが現状です。

こうした困難に直面しつつも、コロナによって、本来なら2030年頃にしか実現しなかったであろうIT化が一気に進んだというプラスの側面もあります。それくらい速く変化に対応しなければ生き残れないと各社が気づき始めたのでしょう。例の1つとしては「在庫の共通化」が進んだことが挙げられます。旅行会社もattaのようなスタートアップも共通してホテルの部屋を販売できるシステムが広まっていったことで、売れ残りを減らせるようになりました。どの企業もこうしたIT化に対応すべくシステム開発が必要で、エンジニアリング力がますます問われるようになっています。

 
そうしたなかポストコロナを見据えて、attaは2022年にトラベル領域での新たな準備を進めているとお聞きしました。その構想をお話していただけますか。

まずミッションを進化させました。コロナの時期は、attaが組織としてどう貢献していきたいかを振り返る機会にもなりました。「テクノロジーで旅をもっとお得に」というミッションを掲げていますが、そこに「楽しい旅を」と言葉を加えたのです。お客様が旅行で求めているのは「お得であること」だけではなく、「楽しい」と感じられることではないか。豊かな体験を味わえるよう、テクノロジーでサポートすることがますます大事になり、それを具現化していこうという構想を描きました。

たとえば、希望する金額で行ける旅行スポットを見つけたい場合、膨大な情報を検索し、インプットしなければなりません。以前からこの手間を省きたいと考えていました。attaを使えば、航空券、ホテルなど、一回の検索で一番リーズナブルなプランを見つけられます。これはメタサーチ(横断検索エンジン)にあたりますが、くわえて自社サービスでも検索・予約もできるOTA(オンライン・トラベル・エージェント)をそろえることで、ハイブリッドサービスへと進化します。2021年の7月にはそのためのライセンスを取得しました。

もしチェックインまでに予約したプランがお得になっていてキャンセル料が無料なら、よりリーズナブルなプランへの変更をシステマチックに提案できる仕組みを整備しています。今後は、お客様の状況をさらに理解するために、他のパートナー企業とも提携を進めていく予定です。具体的にイメージしているのは、カレンダー情報を所有している企業や、経済データ、健康・感情面のデータをもつ企業です。もちろんプライバシーの問題も解決していくことが必要です。そこでまずは航空券や宿泊予約の料金予測AIの精度を向上させ、こうした企業とデータ連携を進めることで、より「楽しい旅をお得にする」プロダクトを提供していきたいと考えています。

 
プロダクトの革新性を支えるattaの強みは何だとお考えですか。

強みの1つはチーム力だと考えています。attaが掲げる5つのバリューの1つに「Trust(信用・信頼)」があります。最初はお客様にとって信頼されるプロダクトを提供するという意味合いでしたが、attaの新メンバーの一人が、お互いの背中をあずけられる信頼関係をつくっていこうという意味があると。このTrustという言葉が組織に馴染んでいるなと思います。attaはもともと創業時から「モノをつくれる組織」というのを大事にしてきました。資金調達でも投資家の方々から、「このチームなら顧客のニーズが変わってピボットしてもまたプロダクトをつくれる」と高く評価していただけました。

 
attaの組織としての魅力にますます興味がわきました。チームのカルチャーで特徴的なところがあれば教えてください。

まず創業時から完全リモートワークで運営しています。拠点は東京とシンガポールにあり、グローバルなメンバーで構成されています。出身・在住をあわせると、日本、韓国、マレーシア、タイと国際色豊か。住んでいる場所も、東京だけでなく長野、岐阜、徳島など、メンバーの希望するライフスタイルがとれるような柔軟性を確保しています。

同時に、時間・場所の制約を超えてメンバーが円滑にコミュニケーションをとれるような工夫も大事にしています。たとえば、管理部門の役員はメンバー一人ひとりの好みに応じて、救援物資というなの贈り物を自宅に贈るというプロジェクトを続けています。その贈り物の内容がニーズに合っていたか、メンバーからフィードバックしてもらい、次回に活かしていく。この活動がメンバー同士の会話が弾むきっかけになっているようです。これはattaらしい文化を象徴した事例の1つですね。

 
attaで活躍している方の共通項は何でしょうか。

活躍している方に共通しているのは「積極性」ですね。リモートワークだとなおさらですが、仕様書や実際のオペレーションにおける疑問点を既存のメンバーにどんどん質問していくなど、自ら必要な情報をキャッチアップできる方が多いです。もちろん既存のメンバーも新しいメンバーのフォローに協力的で、お互いの集中できる仕事の方法を尊重しながら、サポートする文化が根付いています。

また、どのメンバーも、自分自身の強みが何なのかを認識し、それを発信できていますね。だからこそ各自の強みを把握し、その領域を信頼して任せることができ、少数精鋭でインパクトのあるプロダクトを生み出せているのだと思っています。

 
最後に春山さんの今後のビジョンを改めて教えていただけますか。

まずは2022年にattaのサービスを進化させ、そこでの信頼をもとに他のパートナー企業との連携を深めて、旅のプラットフォームとしての価値を高めていくことです。ユーザーの旅にまつわる手間を省き、楽しくて便利な「旅の体験」に寄与していきたいですね。

そのうえで、将来的には、起業をめざしていてキャッシュの確保がなかなか難しい方々が羽ばたいていくためのサポートや、起業という選択肢を学生に伝えていく活動にもっと関わっていけたらと考えています。起業という選択肢にふれる時期が早く、それに興味をもったとしたら、学生時代のうちにとれるアクションも増えるので。そのためにもattaのビジョンに共感していただける方と一緒に未来図を描き、形にしていけたらと強く思います。

春山さん、貴重なお話を聞かせてくださいまして、ありがとうございました。

 
 
 

読者や視聴者の方で、求人情報や機会など、attaについてもっと知りたいという方がいらっしゃいましたら、是非community@wahlandcase.comまでご連絡ください。


松尾美里

日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター

Attunedのブログ記事作成を行う傍ら、株式会社フライヤーにて経営者、著者へのインタビューを行う。 現在、自身のライフミッションとして「キャリアインタビューサービス」の活動を行う。面白い生き方の実践者に話を聞き、その魅力を発信している。 また、70名の生き方をまとめたブログ「教育×キャリアインタビュー」の著者でもある。


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Misato Matsuo

Japan Interviewer Association certified interviewer/writer. Beyond creating original content for Wahl and Case, such as this piece, she interviews executives or authors for Flier, Inc.

She is currently working on her life’s-work; “A Career Interview Service”, interviewing people who are leading interesting lifestyles. She also has a blog for Education and Career Interviews.

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