Henrik Johansson, Global Head of Growth at Crypto.com

リモートで働くチームはどのようにマネジメントするべきでしょうか？

これは、企業が事業拡大し、新しい市場に進出する際に直面する重要な課題の1つです。現地チームは、地理的にも文化的にも本社から遠く離れていることが多く、現地チームを成功に導くには、適切なリーダーシップが必要です。

この質問に答えるのに、Crypto.comのGlobal Head of GrowthであるHenrik Johansson以上の適任者はいないでしょう。

Henrikは、SpotifyのHead of Global User Growthを務めた経験や、日本を拠点にグローバルチームを管理する現職の経験から、グローバルにリモートチームをマネジメントする知識・経験が非常に豊富です。

彼の考えでは、これは1つのことに集約されます。

リーダーとして、チームに正しいコンテクストを示し、自分がいなくても成功できるように力を与えることです。

この記事は、Henrikに行ったビデオインタビューに基づくものです。インタビューの動画はこちらでご覧ください。

コンテクストの設定

本社から離れた場所にいるチームを管理する場合、最大の責任は正しいコンテクストを示す、あなたの仕事は舞台監督のようなものです。小道具、衣装、照明、音響など、役者が最高のパフォーマンスを発揮できるような素晴らしい舞台を作るために、あらゆるものを用意します。

リモートのチームをマネジメントするのも、これとほとんど同じです。

あなたの仕事は、適切なコンテクストを示し、チームメンバーに対して、彼らがが取り組んでいることのもっと大きな全体像を示してあげることです。長期的な目標について話すことに多くの時間を費やし、常に以下ことを念頭に置いてもらう必要があります。

なぜ、私たちはこの仕事をしているのか？

現在、私たちにとって何が重要なのか？

3年後、5年後を考えた時、何が重要か？

あなたのチームには、到達すべきゴールが必要で、それによって進むべき方向がわかるようになります。どのような方法でそこに到達するかは、チームやその場所、環境によって異なるでしょう。しかし、大きな目標は一致させなければなりません。

マネージャーとしてのあなたの仕事は、会社の大まかな方向性を説明することです。詳細の説明にあまり時間を割く必要はありません。

チーム全員が、自分たちがどこに向かっているのか、なぜそれが重要なのかを知っていれば、本社に常に確認しなくても、自分たちで多くのことを決定することができます。

マネージャーとして一番やってはいけないことは、すべての決断に関与することです。そうすると、チームの動きが鈍くなり、悪循環に陥るばかりです。チームメンバーは安心感を失い、すべての決定についてあなたに確認するようになり、仕事の効率が悪くなり、あなたを圧倒するようになります。最終的には、チームがあなたの決断を待っているため、あなたがボトルネックになってしまうのです。こうなると、デレゲーションが機能しなくなり、組織が弱体化することになります。

もうひとつ覚えておきたいことは、チームに対して何度も何度もメッセージを繰り返す、ということです。チームメンバーはあなたの意図を理解していないわけではなく、他にもことをたくさん考えています。常に全体像を思い起こさせることで、全員が一致団結し、ゴールを見失わずに済むでしょう。

『一つの指針は、チームによる素晴らしい成果に、マネージャーは常に驚かされ続けたいということです。』

これは、特にリモートのチームをマネジメントするときに重要です。

実際にオフィスでチームメンバーと一緒に座っていると、意思決定により深く関与することになります。マイクロマネジメントではなく、会話を耳にし、同じ会議に座り、緊密に連携し、スクリーンに映る何かを見てしまう、など、自然に起こりうることです。

一つの指針は、マネージャーであるあなたは、チームによる素晴らしい結果に常に驚かされたいということです。つまり、チームがあなたの判断に頼ることなく、正しいコンテクストで、正しいことに取り組み、正しい優先順位をつけているということです。それが実現すれば、誰にとっても喜ばしい結果となります。

あなたや本社の人間は、リモートで働く社員には、大きなオフィスにいるときのような自然なコンテクストがないことを理解しなければなりません。もし、ローカルチームに適切なレベルのコンテクストを与えなければ、彼らはパズルの小さな一片しか見ることができません。そして、その効果は半減してしまうのです。

昔のやり方を再現しない

リモートチームのマネジメント方法について語るとき、本社から離れた場所にあるオフィスだけの話ではなく、パンデミックによって形成されたハイブリッドワークの新しい世界についても理解する必要があります。

リモートワークはもはや例外ではなく、当たり前のことであり、誰もがこの新しい働き方に適応しなければならないのです。

しかし、多くの人はそうではありません。

最大の間違いは、リモートワークという新時代に、これまでの働き方を再現しようとすることです。多くのマネジャーは、いまだに同じ方法で会議を開き、同じ方法でカレンダーを管理し、同じ方法で優先順位を共有しています。彼らは、リモートワークで得られる機会を認識せず、課題ばかりを見ているのです。

『若い人材を惹きつけ、維持し、力を与えたいのであれば、このような習慣化された働き方から脱却する必要があります』

チーム間の非同期性、情報共有の全く異なる方法が存在するのです。この移行に成功するチームは、オフィス環境でうまくいっていたことを再現しようとするチームではなく、新しいアプローチを考え出すチームなのです。

このために、自問自答する必要があります：

ゼロから始めるのであれば、どのように情報を発信していくのか？

今、ゼロから始めるとしたら、どのように情報を発信し、どのように優先順位をつけるのか？

この数年のパンデミックによって、リモートワークのためのツール関係の、新しい業界が生まれたのは良いことです。

少し違った考え方をする必要があり、特に決まった働き方をしている組織にとっては、はじめは抵抗があるかもしれません。しかし、いったんそれを受け入れると、驚くほど力が湧いてくるものです。

これは、IT業界やスタートアップの環境で働く場合、特に重要です。これらの企業には多くの若者が集まっており、彼らは古い世代の労働力とは異なる期待を持っています。彼らはデジタルネイティブであり、「私たち」の働き方に慣れていないのです。ですから、そのような人材を引き付け、維持し、力を与えたいのであれば、こうした染み付いた仕事のやり方から離れる必要があるのです。

まとめ

リモートチームをうまく管理するためには、適切なコンテクストを設定する必要があります。あなたの仕事は、全員が会社のビジョンや長期的な目標、期待されていることを理解していることを確認することです。次に、彼らが自分で決断できるようにすることです。マネージャーとして、チームに必要なすべてのツールを提供し、彼らが自分で仕事ができるような自主性を持たせるのです。そうして初めて、彼らは成功するのです。