「現場の音声デジタルトランスフォーメーション」の先駆者、BONXの現在地と未来図に迫る
さまざまなビジネスの「現場」のコミュニケーションを支える株式会社BONX。
「世界を遊び場にする」というビジョンを掲げ、2016年12月には画期的な音声コミュニケーションデバイス「BONX Grip」をリリースし、スノーボードなどのスポーツシーンで大反響を得ました。
つづいて2018年4月にリリースした「BONX for BUSINESS」(現:BONX WORK)によりビジネス展開をスタート。いつでもどこでも仲間とつながり、あらゆるシステムと音声でつながり、チーム全体の成長をドライブするグループトークソリューションへと成長を遂げています。活用の現場は、飛行機や小売店、スポーツチーム、医療現場、介護現場など。
現場業務におけるコラボレーションハブとして広がりを見せるBONXの現在地と未来図とは?株式会社BONX代表取締役CEOを務める宮坂貴大さんにお聞きしました。
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BONX WORKの展開の広がりについて、数多くのニュースリリースでお見かけしています。まずは、御社のプロダクトの革新性について語っていただけますか。
まずお話したいのは、BONXはまず現場のコミュニケーションの大変さを解消するために生まれたという点です。スノーボードやスキー、自転車などスポーツもそうですが、デスクワークではない現場は店舗やホテル、飛行機、医療現場など多岐にわたります。デスクワークではslackなどのチャットツールやオンライン会議システムなどが発達してきましたが、現場ではトランシーバーや電話といったツールしかなく、コラボレーションのテクノロジーがこの十数年進化していなかったのです。
こうした現場のコミュニケーションの不自由さを解決するために、BONXにはソフトウェア、ハードウェア両面から、乗り越えるべき技術的課題がいくつもありました。
1つは、VoIP(ボイプ:Voice over Internet Protocol)という、インターネットを通じた音声コミュニケーションの仕組みの開発です。もともとBONXは「雪山で、滑りながら話したい。」という思いから、最先端の技術を結集して誕生したもの。電波が不安定な場所でも、自動再接続機能や遅延最小化アルゴリズムによって、最小のストレスで話し続けることができます。インターネット接続さえあれば、相手が遠くにいても問題なし。従来のトランシーバーよりも圧倒的に高音質という、現場で使える独自の仕組みをつくりました。これをつくろうとした2014年当時は、家でSkypeを使っていてもよく切れてしまうという時代だったので、本当に大きなチャレンジでした。
もう1つは、激しい動きの中でも耳を心地よくホールドし、堅牢性を備えた独自のイヤフォンの開発です。ソフトウェア、ハードウェアともにかなりの難関でした。ですが、現場のコミュニケーションの課題を解決したいという思いにより、BONXのチーム力で何とか乗り切ってきたという経緯があります。
「BONX WORK」によって、飛行機・医療現場・ホテルなどビジネスシーンへと活躍の場が拡大しています。現在どのような広がりを見せているのか、事例とともに教えていただければ幸いです。
BONXの特徴はユニバーサルに、どんなシーンでも活用できる点です。コロナショックの現在においては、医療の最前線で使っていただいています。患者さんのいらっしゃる場所では、医療従事者は防護服を着ないといけないのですが、場外にいる人と連絡をとりたくても電話をさわることもできない。
ですが私たちのプロダクトを装着していれば、手がふさがっていても自動的に通信できて、場外の人ともコミュニケーションをとれる。医療従事者はもちろん、患者さんをサポートする関係者の方々も初めての経験で不安を抱えていらっしゃる。BONXのイヤフォンをつけていればいつでもコミュニケーションできる。
これにより、未知の経験への不安感を緩和できることに大きな意義があると考えています。また介護現場でも、いつでもどこでも、作業をしながらでもメンバーとクリアにコミュニケーションがとれるという点が評価され、活用が広がっています。
ウィズ/ポストコロナの時代において、御社のプロダクトは、リモートワークしていても音声で常時つながりオフィス空間での一体感を再現するなど、働き方・チームワークのあり方も、よりよいものに変革しようとしています。今後の構想・展開について教えていただけますか。
実はBONXはすでに音声デジタルトランスフォーメーション(DX)の領域にきりこんでいるのです。松屋銀座の例を紹介しましょう。オーダーメードスーツの採寸結果を声で入力できるシステムを開発し、松屋銀座さんに導入しました。これまで採寸というと、テイラーが数字を読み上げ、別のスタッフがその内容を紙にメモ。それを後で顧客管理システムに登録するというように、かなり労力がかかっていました。
ですが、今回リコーさんと一緒に開発した音声ソリューションを使えば、BONXイヤフォンを耳に装着して計測値を声に出すことで、顧客管理システムに自動でデータが入力されるようになります。複数人で分担していた採寸作業の業務を一人で完結できるうえに、大幅な効率化が実現できます。
これはあくまで一例でBONXはユニバーサルなツールだからこそ、業態・業界を問わずグローバルな企業の現場とコラボレーションをすることが可能です。BONXはオフィスワークのコミュニケーションを支えるslackのように他のツールと連携できるので、まさに「slackの現場バージョン」といえるでしょう。今後はそんなコラボレーションハブとしてグローバル展開をめざしていけたらと考えています。
これからBONXに参画していただくエンジニアの方へのメッセージをお願いします。
BONXのエンジニアは、エンジニア同士はもちろん、カスタマーサクセスチームなどとも密な連携をとっていて、チームワークを大事にしています。現場のフィードバックに耳を傾け、それを開発に活かすことに喜びを見出せる方に参画していただけたら嬉しいですね。現場のコミュニケーションを円滑にし、グローバルでユニバーサルな「コラボレーションハブ」を築くという構想に向けて、一緒に挑戦を楽しめたらと思います。
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松尾美里
日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター
Attunedのブログ記事作成を行う傍ら、株式会社フライヤーにて経営者、著者へのインタビューを行う。 現在、自身のライフミッションとして「キャリアインタビューサービス」の活動を行う。面白い生き方の実践者に話を聞き、その魅力を発信している。 また、70名の生き方をまとめたブログ「教育×キャリアインタビュー」の著者でもある。