SignTimeと日本の電子署名市場 : Jim Weisser氏インタビュー PART 1

Jim Weisser | Co-Founder & CEO, SignTime

なぜ日本には電子署名サービスが必要なのでしょうか?

今回のインタビューでは、アメリカ出身の起業家で、SignTimeの共同創業者兼CEOであるJim Weisser氏に、日本で起業するために必要なことを伺いました。

SignTimeは、電子署名サービスを提供するウェブアプリケーションです。これは、署名のための文書の送信、文書の管理、再利用可能な契約書テンプレートの作成など、ビジネス運営に不可欠なオンライン要素を含んでいます。

インタビューPART1では、ジムが現在経営するSignTimeについて、また日本の電子署名の現状や日本市場で直面している障害について伺いました。

 

SignTime創業の背景はどのようなものでしたか?

私とパートナーの Jonathan Siegelは、2020年9月に日本でデジタル契約と電子署名を提供するためにSignTimeを設立しました。

Jonathanは実は2010年にアメリカで電子署名の会社立ち上げを成功させており、日本でも同じようなものを作ろうと考えていたのです。そこで我々は2018年に日本の市場を分析しましたが、その際はまだ創業には適切な時ではないと判断しました。

その後、2020年にパンデミックが発生し、私が行っていた事業などで、電子署名のソリューションが必要であったこともあり、再度Jonathanに連絡し、SignTime創業に至りました。

 

パンデミックによって何が変わりましたか?また、日本市場特有のニーズはどのようなものでしょうか?

パンデミックにより、多くの人がリモートで仕事をするようになると、日本の従来の契約締結の方法に限界があることが明らかになってきました。多くの人は、書類にハンコを押すためだけに、月に何度も出社しなければなりませんでした。

ハンコは日本特有の文化です。会社には必ず社印があり、この社印はさまざまな場面で必要とされます。非常に強力なものなので、紛失するとセキュリティ上の問題が発生します。また、ハンコ自体はサインをするための一般的な方法なので、宅配便の荷物のサインに実印でない自分のはんこを使う人も多いですね。

 

SignTimeが直面している最大の課題は何ですか?

最大の課題は、ホワイトカラー(頭脳系労働者)層における電子署名の普及率の低さです。日本のホワイトカラーの人口は約3000万人ですが、このサービスを利用しているのはわずか2%です。これは低すぎます。

なぜDocuSignやSignTimeのようなサービスを利用しないのか、企業の方にお話を伺うと、いつも同じような理由を聞きます。国際的な契約にしか電子署名を使わない企業もあれば、書類に実際に押印するのに慣れているので、電子署名ではしっくりこないという企業もあります。

そこで今、私たちは日本企業にこうした従来の考え方を克服してもらおうと努力しています。

JIPDECによると、複数の部署や取引先と電子契約を結んでいる企業は17.6%にとどまり、15.1%の企業が「電子契約に移行する予定はない」と回答しています。主な理由は、社内や顧客先での新しいシステム導入にかかる時間や手間、そして金銭面の問題です。

日本が電子署名に消極的なのは、純粋に感情的な理由だと思います。法的にはほぼすべてのケースで電子署名が使えるのですが、それでも人々は電子署名は一部の狭い範囲でしか使えないと考えています。私自身は、法的拘束力のある契約全てに、電子署名を使うべきだと考えています。

 

デジタルトランスフォーメーションの観点から、日本ではどのような分野に機会があるとお考えですか?また、現在SignTimeのパイプラインにはどのようなものがありますか?

特にワークフローに関しては、今後2、3年の間に多くの機会が訪れると思います。一般的にデジタルトランスフォーメーションについて考えてみるとデジタル変革には4つの段階があります。(Nicholas Negroponte著『Being Digital』参照

第一段階は、単に紙をデジタル化するだけです。第二段階は、プロセスの断片を取り出し、再構築するところから始まります。第3段階では、それらのシステムが互いに影響し合い、より複雑なプロセスを作り出します。そして第4段階では、NFTのような純粋にバーチャルなものを作り上げることになります。

日本のホワイトカラーの多くは、まだ第一段階か第二段階にあり、デジタル変革のチャンスは非常に大きいと私は考えています。契約に関しても、AIを活用することで面白いことができると考えており現在実験中です。

また、物理的なものも検討しています。現時点ではあまり詳しくはお話できませんが、電子署名に関連するハードウェアデバイスの特許を申請しました。

 
 

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